on that occasion 叙情詩 流浪

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叙情詩

過去に書いた作品をいくつか掲載しています。

流浪

君と行った神戸は
多分十年ぶりだった
思いつきで飛ばしたら
国道西へ向かってた

三宮じゃないんだ
まずは君の町に行こう
次の信号左へ
入り組んだ工場で止まった

ヘルメットを脱いで二人
缶コーヒー灰皿代わり
「地震の後引っ越して
ここはまだ空き家なんだ」

2号線垂水から
県道の坂を上がる
まだ道を覚えてる
バイクは渋滞すり抜ける

六甲に引っ越した
大学の跡地で止まる
駐輪場はまだ残ってる
チャペルもまだ残ってる

「あたし多分地震がなかったら
普通に短大に行って
普通にどっかで働いて
多分お水もしてないかな」

ガレージになったアパート
西に傾く太陽
記憶はまだ残ってる
君も嫌いな神戸にいる

僕はこの春転職をする
君はこの夏結婚する
僕らはもう忘れたフリ
ただそれだけのこと

君と行った神戸は
多分十年ぶりだった
思いつきで飛ばしたら
国道西へ向かってた