過去に書いた作品をいくつか掲載しています。
退院して彼女は
カメラをひとつ
欲しいと言った
自分が好きな花を
一枚一枚撮りたいと
とりあえずすぐに
飽きると思って
数百円の
使いきりカメラ
ひとつ渡した
それから僕らは
いろんな所へ行った
奈良とか須磨とか
まるで失った時間を
取り戻すように
だんだんと体力が
落ちてるの分かる
だんだんと心が
穏やかになってる
それを全て受け止めて
ちっぽけなレンズだから
美しい花もぼやける
そのうちのたった一枚
僕の後ろ姿だけが
鮮明に写ってた