on that occasion 散文 風のロボット

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散文

過去に書いた作品をいくつか掲載しています。

風のロボット

昔お付き合いした人。
お寺の娘さんでね。
絵に描いたような美人さん。
モテモテ。
思考回路は理系。
男を遊ぶように扱う。
泣き虫。
依存心が強い。
ガラスのようなハート。

彼女は不倫をしていて。
その不倫を終わらそうとしている時に、僕と出会った。
付き合うまで時間が掛からなかった。

彼女は不倫が終わったと言う。
でも、相手はそう思っていなかった。
僕はこのために出会ったのかなと思った。

彼女はリバーシが好きだった。
家にきた時。
お酒を飲みながら、リバーシをしようと言う。

僕も携帯のゲームとかでリバーシは好きだから。

序盤はほぼイーブン。
ってか、ちょっと僕が圧され気味。
中盤。もしかすると負けるかも。
けど、気を抜かず。

後半。
彼女はひとつミスをする。
そこから、集中力が消えて。
お酒のせいにして、試合を放り投げる。

彼女らしい。

彼女はまるで籠の中の鳥のようだった。
外の世界に憧れて。
その美しい羽根と鳴き声を使って。

外の世界は寒くて怖くて。
結局は籠の中に戻ってしまう。
何事もなかったように。

だけど、外で出会ったカラスや鳩は
彼女のことを忘れてはいなく。
時々、急に思い出して。
懐かしむ。
泣いていたことを思い出す。


前の会社で出会った子。
まったく環境は違うけど。
どことなく雰囲気が似ている。
少し探せばいそうなお嬢さん。
家は昔ながらの少し由緒ある家系らしい。

彼女は何をやっても中途半端らしく。
大学を中退して。
バイトを転々として。
いいかげん何とかしなさい、と親に言われて
この会社に入ったそうだ。
お給料は安くてもいい。正社員でいられたら。
それが口癖みたい。

彼女はお付き合いしている彼のこと。
親に言えないでいる。
理由は家柄が違いすぎるから。

彼といる時は楽しいそうだ。
でも、別れを考えている。
見合いをすることを考えている。


「一度離婚を経験した男の人って
 絶対に追っかけないんですって。
 前に飲み屋のママから聞いたの」

彼女は天使のようだった。無邪気だった。
こんな僕に
200%の力で愛情表現をしてくれた。

僕が何も言わないのに
僕に合わせようとして
彼女が今まで読んだことのない本を
たくさん図書館から借りて
睡眠時間を減らして
ずっと読んでいた。

僕の言葉が好きと言ってくれた。
滅多に見せない酔った顔が好きと言ってくれた。

二人で見た海は真っ青だった。
海を覆う空の青より澄んでいた。


彼女はまるで籠の中の鳥のようだった。
外の世界に憧れて。
その美しい羽根と鳴き声を使って。